薬剤師として働いていると、いろいろな気付きがある。
数年前から始まった医薬品の供給不安定問題で、いろんな薬が入ってきたり入ってこなかったりしている。
最近だと、風邪薬関連、痰切りの薬や咳止めの薬などが入ってこない。
ちなみにここ何年も入りにくい状況が続いている。
もう入ってこない状況に慣れてしまったのは我々薬剤師だけではない。医師もだ。
薬局から、この薬がないので違う薬に替えてくださいという問い合わせは後を絶たない。
悲しいかな、これが日本の医療の現実だ。
市販薬の充実
しかしその一方で、市販薬の方はどんどん充実している。
というのも、上にも書いた痰切りの薬や咳止めの薬が、市販薬として新しく発売され始めているんだ。
咳止めも痰切りも2024年3月2日時点ですでに発売されている。
これらは医療用と同量の有効成分が配合されている。
医療用だとなかなか薬局に入ってこないのに、市販薬だと買えてしまう。
これが何を意味するかわかるだろうか??
風邪はセルフメディケーションでなんとかしなければならなくなる時代がきているということだ。
これには医療費削減の影響が大きいのだろう。
国の医療費の負担増
病院に行くと、基本的には自己負担3割で治療を受けられる。これは薬をもらうときも一緒。薬も3割の値段でもらえる。
残りの7割は国が負担しているんだ。これが国の医療費を圧迫している。
少子高齢化で、年寄りばかりが増えている。年を取ると体が悪くなる。そうすると病気にもなり、薬を飲む。医療費が増えていく…といったからくりだ。
薬価という名の薬の値段
医療費削減にあたってはいくつか要因があるので何が悪いかは一概に言えないのだが、端的に言うと医療用の薬は国が薬価という形で値段を決めている。製薬会社が自由に値段を決められるわけではないんだ。
そしてその値段は基本的には国によって年々下げられてしまう。つまり製薬会社の利益は年々減っていっている。
医療用医薬品は国が値段を決めるから、製薬会社は年々利益が減ってしまう。
しかし市販薬として発売したときはどうだろう。基本的には薬を飲む人が金額を全て負担するから、国が医療費として負担することはない。つまり、値段が下がっていくことはないから、利益が減ることもない。
市販薬として販売すれば、利益が減ることはない。
風邪は市販薬で治していく時代へ
医療用医薬品→市販薬
この流れは医療費増大の現在では仕方のない流れなんだ。
国が医療費という観点ですべての疾患を面倒をみるということに関して、限界を迎えつつあるということを意味しているのではないかと俺は思う。
風邪に関しては、もう病院ではなく薬局やドラッグストアで薬を買って治してねと言われているような気がしてならない。
薬剤師の職能への期待
おそらくこの流れは薬剤師への期待も含まれていると思う。
というのも、普通の人が市販薬を選ぶにも限界がある。どんな薬を選んでいいのかわからない場面に直面することは必至だ。今まで医師が担っていた風邪改善のための手綱を、薬剤師が担うことになる。
医師による診断が必要なのか、あるいは市販薬での対処で問題ないのかを薬剤師が判断することが当たり前になっていくだろう。
さいごに
今回は薬が入らないという出荷調整の問題から薬剤師の職能が広がっていくのではないかというところまで話を広げてみた。
実際、もうこの流れは起きているし、止まらないと思う。
時代の流れを理解して、その流れに逆らうことなく乗っていく。そんなスキルも必要なんだぞと思う今日この頃だった。